物流2024年問題の対策

1物流コスト上昇

・2023年中の、諸経費や燃料費高騰による運賃値上げ交渉が活発になります。佐川急便やヤマト運輸などの最近の値上げにみても、取引先の運送会社からの現行運賃の10%増以内は妥当の様です。2024年4月以降、再度、人件費上昇による運賃値上げ交渉が活発になります。
・特に大幅な運賃値上げが予想される分野は次の通りです。

(1)輸送距離が400km以上の長距離輸送
運転手の時間外労働時間が年960時間に規制され、かつ休息時間が1時間増え継続9時間を下回らないことに改定され、400km以上の長距離輸送は従来の運行方法では困難になった。中継輸送や長距離の運行回数を減らすなど対策は進められているが2024年4月以降、輸送コストは確実に上昇する。

(2)地方での輸送
都心部に比べ地方は貨物量が少なく2024年を前に運送会社の整理淘汰が進んでいる為、地方では運送会社の選択肢も限られている為、運送会社から強気な価格交渉が予想され、2024年4月を前に既に運送会社から大幅な値上げ交渉が進んでいる。

(3)輸送条件が悪い荷主
輸送量が多くても、配送条件が悪い荷主、例えば安い運賃/積込地が遠い/積込み時間が遅いなどの輸送条件では、運送会社として2024年を前に改善する必要に迫られ、大幅な運賃改定や、断り前提にした50%増や100%増の運賃提示を受ける場合もあります。「現状では来月から車が回せない」といった、いきなりの交渉になりそうです。運送会社間の商習慣では、何十年の取引でも一か月前予告の撤退なら非常識とは捉えません。

「標準的な運賃」について
国土交通省が指針とする「標準的な運賃」へ、運送会社より運賃改定の要望があった場合、相当の値上げになります。「標準的な運賃」は実勢の最低運賃より、常用便は1.5倍長距離は1.5~2倍になっております。
参考全日本トラック協会関連サイトhttps://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000275060.pdf
「標準的な運賃」(働き方改革法施行を踏まえ令和2年4月告示)常用便関東運輸局の場合/200km走行/月間20日稼働として
4t車10t車トレーラー
57,860円/日74,880円/日95,470円/日
1,157,200円/月1,497,600円/月1,909,470円/月
長距離輸送東京発→名古屋市(距離347km)東京発→大阪市(距離493km)東京発→仙台市(距離367km)
4t車90,980円4t車119,960円4t車95,120円
10t車117,840円10t車155,430円10t車123,210円

2輸送条件の改善要求

荷主に対し、政策パッケージに商習慣の見直しとして次のことがあげられております
(1) 荷待ちや荷役時間の短縮
(2) 納品期限の見直し
(3) トラックの「標準的な運賃」制度の拡充・徹底
(4) パレットにより積降時間の短縮
加えて
(5)常用車両の拘束時間のチェック
常用便の場合一か月の残業が80時間以下でること、仮に月間22日稼働場合、一日の拘束時間平均が定時8h+80h/22日+休憩1h≒12.7時間以下であること。これは運送会社の事業所を出庫してから帰庫までの時間を含みます。

3荷物が運べない/荷物が届かない

物量が多いから運送会社に無理を言えていた荷主や元請けも運送会社にとって不採算であれば、また物流幹線網が細い地方では、2024年4月以降荷物が運べない、荷物が届かない、納期に間に合わない事などが顕著にでてくる可能性もあります。

(1)従来の依頼先運送会社から断わられるリスク
常用便の運送会社から突然、廃業や経営再編等で輸送を断られる。

(2)輸送手配が困難になり納期迄に荷物が届かない
スポットの輸送の手配が難しくなります。

(3)輸送サービス停止荷物の形状が悪い、荷物の量が少ない、配送エリアが不便等で採算が悪い

4企業価値の上昇/低下

・モーダルシフト(船舶や鉄道利用)による省力化、コストより低炭素化を重視した取組が企業価値を高める
・トラックGメンを発足させ、運送会社に対し不適切な取引を強いる荷主・元請け・着荷主の監視体制を強化し、改善が見られない場合は是正措置を要求、さらに改善がみられない場合は勧告を出して悪質荷主として社名の公表。

5運賃値上げに対する対策

A)運送会社と早めの協議
既存運送会社の2024年4月以降の取引の継続の為の、価格改定や輸送条件の改善点の有無について運送会社と頻繁にかつ早めの打合せを実施する。運送会社との早めの打合せや早期
(1)荷待ちや荷役時間の短縮
(2)納品期限の見直し
(3)トラックの「標準的な運賃」制度の拡充・徹底
(4)パレットにより積降時間の短縮

の運賃変更は2024年4月以降の取引の継続の為にはとても重要です。運送会社から急な断り
の防止にもなります。加えて、運送契約書の見直しで、契約期間や中途解約について明記することは、荷主と運送会社双方にとって大切なことです。

B)相談ができる運送会社持つ
既存運送会社との取引が現在順調であっても、今後は運送会社の経営環境が大きく変化するため、大幅な値上げや輸送条件の変更を要求されるケースもあります。現在取引のない運送会社とのつながりを持つことは大切です。現在の運賃水準が適正であるかの検証、既存運送会社にないサービスや機能を有してたり、生産性向上のヒントをもらうケースもあります。

6荷主が主体となって取り組むべき対策

物流2024年問題は、荷主毎で全く状況が異なりますので、対策も千差万別です。一般的に取り上げられている対策とその効果を一覧表にしました。ブルーはメリット、ピンクはデメリットとして色分けしました。